あらすじ
不思議な町の霞
ある町には、朝になると不気味な霞が町を包み込むことで有名な場所があった。町の人々は昔から「朝霞門を出でず」と言い聞かせ、朝は外に出ないのが定番となっていた。しかし、夕方になるとその霞はすっかり消え、まるで別の世界のように清々しい空気が広がる。「暮霞千里を行く」という格言の通り、夕方には人々は楽しそうに遠出をするのだった。
ある日、若者のタケルが、町の外れにある森へ行くことを決心した。朝霞が立ち込めていたので、彼は一晩中家で眠り、夕方の霞が薄れた頃にこっそり出発した。森の中を進むうち、彼は大きな声で笑っている黒い影を見つけた。それは彼が聞いたこともないような、荒々しい笑い声を響かせる不気味な生き物だった。
タケルは興味をそそられ、そっと近づいてみると、影はその笑い声で彼を迎え入れた。「君、朝に外に出るのが怖いのか?それとも、月明かりの下で遊ぶ方が好きかい?」影は嘲笑いながら言った。タケルは「朝の霞は霧のように恐ろしいが、夜は面白いことが多い」と答えた。影はその言葉を聞いてさらに笑い、タケルを誘い込んでしまった。
結局、タケルは影に取り込まれてしまい、朝霞の中で永遠に遊び続けることになった。町の人々はその後も朝霞に怯え、タケルのことを忘れた。しかし、彼の声が朝霞に混じって響いているのを誰もが耳にするのだった。「朝霞門を出でず、暮霞千里を行く」とは、このようにして朝の恐れを無視することで起こるさまざまな不幸を意味していたのかもしれない。
