あらすじ
熱い日々
ある夏の真昼、町外れの古びたホテルに、探偵の佐藤が宿泊していた。彼は、ある未解決事件を追い、長い夜を明かした後に疲れ果て、真昼の熱気にうんざりしていた。エアコンの故障も手伝い、部屋の中は蒸し風呂のよう。彼は心頭を滅却し、「この暑さを忘れよう」と決意した。
ところが、彼の決意は意外な形で試されることになった。窓の外から大きな火事の音が聞こえ、何事かと外を見ると、近くの倉庫が燃えていた。通りの人々が騒ぎ出し、火の手がどんどん広がっていく様子を見て、佐藤は笑ってしまった。「心頭を滅却すれば火も亦涼しだ。そして…煙も蜜の味だ」と彼は心の中でつぶやく。
人々が慌てふためく中、佐藤は焦げ臭さに包まれた部屋で、冷たいビールを開ける余裕すらあった。「心の持ちようで何でもしのげる」と自らを励ましながら、火事の様子を笑い話に変えていく。周りからは頭のおかしい男だと見られたが、彼にとってはそれが楽しい娯楽だった。
しかし、次第に火がホテルの方へ近づいてくると、他の宿泊客たちは逃げ惑い、佐藤だけが涼しい顔をしてビールを楽しんでいた。すると、突然ドアが開き、消防士が彼を非難の目で見つめた。「こんな時に何をしているんだ!」と。しかし佐藤は笑みを浮かべて言った。「心頭を滅却すれば火も亦涼し。どうせこの熱気も、もうすぐ楽しめるエンタメになるさ」——笑いながら、火と、そして自分を焼き尽くす運命のなかに突っ込んでいった。









