あらすじ
風刺的物語「蔵を建てる商人」
ある町の中心に、非常に吝嗇な商人、与吉が住んでいた。彼は何よりも利益を重んじ、仕入れ値を下回る価格で商品を売ることなど考えられなかった。与吉は、たとえ一銭でも損をすることがあれば、町の人々に誇らしげに宣言した。「こんな価格で売るなんて、私は損をしている!」
与吉の商売は毎年徐々に利益を上げていったが、彼はそのことを過小評価していた。「損している」と口癖のように言い続け、周囲には常に愚痴を言っていた。そんな彼の姿を見た町の人々は呆れ果て、「与吉の損は、実は元々の利益を超えているのかもしれない」と笑いのネタにしていた。
ある日、与吉はついに大きな蔵を建てることを決意した。他の商人たちはその動きに驚き、貯金を切り崩すような真似はせず、コツコツと商売を続けていた。しかし、与吉はさらなる利益を追求し、町の人々を巧みに言いくるめて商品を売りまくった。彼の「損をしている」とのつぶやきは、いつの間にか真実から逸れていた。
蔵が完成すると、町の人々は与吉を見上げて驚いた。与吉は堂々と、「ほら、私の損を見ろ!これだけの蔵を経て、私はまた儲けたのだ」と言った。そして、誰も信じていなかったその言葉には、町の人々は満面の笑みを浮かべた。損だなんて言い続けていた彼の裏には、いつの間にか見栄と商才が隠れていたのだ。お金持ちになった与吉は、独り占めの蔵の中で満足そうに微笑み続け、その影にいる人々はただただ彼の言葉を笑いの種にするのだった。

