あらすじ
漆と生地
ある町に、「漆屋たけし」という名の職人が住んでいました。彼は自慢の漆を使って、美しい器を作ることで有名でした。しかし、何かと不運が重なり、たけしの店は次第に潰れかけていました。客は減り、仕入れの漆も買えなくなり、彼の器はみんな少しずつ傷んでいったのです。
ある日、たけしは自分の器を見て、「漆は剥げても生地は剥げぬ」ということわざを思い出しました。しかし、彼の心の中にはブラックユーモアが芽生えました。「それじゃあ、私の 人生も漆のように、見かけは剥げてきたけど、内面は変わらないってことだな」と。そこで、彼は自分の不幸を笑い飛ばすことに決めたのです。彼は町の人々に向かって、自らの器の傷を誇張して話すようになりました。
「この器は、実は運命の試練の証なんだ! 最初は漆がピカピカだったが、色んな人に使われるうちに剥げちゃった。だけど、生地は今でも耐えてる!お前にも誰にでも生地はある!」そんなふうに、自らの不運を人々に語り聞かせるたけしの姿は、次第に町の笑い者となりました。みんなは彼の話に笑い、そこから勇気をもらいました。
ある晩、たけしは自分の店の前で、何気なく見上げた星空を見つめていました。「漆や生地が剥がれても、どんなに傷だらけでも、また新しい漆で塗り直せばいいんだ」と思いながら、落胆を受け入れ、次の日に向けて新たな決意を固めました。変わらない本質がある限り、どんな笑い話でも、人生の漆になってゆくのだと。




