あらすじ
幽霊の正体見たり枯れ尾花
ある静かな村に、老舗の旅館があった。この旅館は、数十年前から「幽霊が出る」との噂が立ち、訪れる人は少なくなっていた。宿の主人、田中さんは、毎晩一人で客を待ちながら、かつての繁盛を思い出してはため息をついていた。
ある晩、夜空がきらめく中、若い女性の旅人が訪れた。彼女の名は紗希。幽霊の噂を聞きつけ、挑戦する気持ちでこの旅館に泊まることにした。田中さんはビックリしながらも、顧客が来たことに喜びを感じた。紗希は、心を強く持ち、幽霊の正体を探る決意を固めた。
夜が更け、静寂の中、紗希は廊下を歩いていると、突然、ひんやりとした風と共に「ざわ…ざわ…」という声が耳に入ってきた。その瞬間、彼女は背筋を凍らせた。怖れを抱きながらも、声の正体を探るために一歩ずつ進み続けた。しかし、どんなに探してもその声の主は見つからない。ただ、松の木の下に生えた枯れ尾花だけが、月明かりに照らされて揺れていた。
翌朝、紗希は昨夜の出来事を田中さんに話すと、彼は笑いながら言った。「あれはただの枯れ尾花です。暗闇では恐ろしいものに見えるかもしれないけど、よく見ればただの草です。」その瞬間、紗希は心の中の不安が消え去るのを感じた。それ以来、彼女は恐怖を抱くことなく、周囲の普通のものを見つめ直すことができるようになった。幽霊の正体は、実は自分の不安だったのだ。村の旅館は再び賑わいを取り戻し、田中さんは笑顔で宿を営む日々に戻っていった。
