あらすじ
一文銭の男
町の片隅に、ものすごくけちんぼな男が住んでいました。彼の名は、貧吉(きんきち)。貧吉は、見かけは普通の中年男でしたが、お金のことになると目が爛々と輝き、財布の紐は堅く閉ざされるのでした。彼は常に「一文銭で生爪はがず」ということわざを口にし、自分の小さな利益のためには、どんなに痛みを伴うことでも辞さない覚悟を持っていました。
ある日、貧吉は町の市場で安売りのリンゴを見つけました。でも、そのリンゴの値段は通常の半額ではなく、まだ少し高いものでした。「こんな高値、出すわけにはいかない!」彼はそう叫び、急いで去りかけましたが、ふと思い止まりました。貪欲な心が、「どうにかして得をする方法はないか」と囁いたのです。仕方なく、彼はリンゴ売りに近づき、こう言いました。「このリンゴ、もう少し安くならないか?」と。
リンゴ売りは微笑んで、「それなら、2つ買ってくれたら一つ分はサービスするよ」と言いました。しかし、貧吉は「二つは必要ない、一つだけで十分だ」と断じ、最後まで値切ろうとしました。結局、彼はリンゴを買うことなく、その場を去りました。彼の心には、得られなかったリンゴの香りが漂ったものの、財布の中の小銭はそのまま残されました。
日が経つにつれ、貧吉は貧しい生活を続けました。ある晩、彼の部屋にネズミが現れ、その音で目が覚めました。「このネズミ、食べ物を漁りに来るのか!」貧吉は怒り、罠を仕掛けることにしました。しかし、罠の材料費がわずかでもかかるのが嫌で、いつまで経ってもその罠を用意することができませんでした。結局、ネズミは彼の食料を食べ尽くし、貧吉は餓えに苦しむ羽目になってしまいました。彼は「一文銭で生爪はがず」の教訓を痛感することになったのです。














